【本・感想】『天地明察』冲方丁~歴史だけじゃない、数学、暦、宇宙への好奇心も広がる1冊。

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こんにちは、引っ越しの荷物では何よりも『本』の箱がダントツに多い、元書店員のまじょじょまです。

今回おすすめしたいのは冲方丁うぶかた とうの『天地明察てんちめいさつ』です。

作品紹介

作品名 :天地明察てんちめいさつ
作者  :冲方 丁うぶかた とう
出版社 :角川書店(単行本・文庫)
出版年月:2009年11月
解説  :養老孟司
備考  :2010年本屋大賞第一位

こんな人におすすめ

☆歴史が好きな人
☆数学が好きな人
☆科学の世界が気になる人
☆空を見るのが好きな人
☆自分の生き方に悩んでいる人
☆子どもの好奇心を広げてあげたい人

『天地明察/冲方丁~漢字だけのタイトルに気後れしないで!

この作品を手に入れたのは、ずいぶん前。

「ホリエモン」こと堀江貴文ほりえたかふみが著書の中で取り上げていて興味を持ったのがキッカケでした。

5年越しに本棚からやっと手に取った1冊です。

読み始めて最初の感想は、『なんでもっと早く読まなかったんだろう・・・。』でした。

実際のところ、家事や育児、仕事だけが、すぐに読まなかった原因ではなかったと思うのです。

かな文字のできた国に生まれたからなのか、漢字だけが並んだタイトルは、一気にハードルがあがるのです・・・。例え実際の内容が親しみやすかったとしても・・・。

なので、同じような理由でまだ本棚の中で熟成されている方がいらしたら、ためらわず手に取っていただきたい1冊です。

あらすじ

時は江戸時代。徳川四代将軍 家綱いえつなの時代です。

主人公は渋川春海しぶかわはるみ。将軍の前で囲碁いごを打つこと(御城碁おしろご)を認められたプロ棋士きし碁打ごうしゅう )の家元いえもと 四家のうちのひとつ、安井家の次男(本当は長男)です。14歳で父の名(安井算哲やすいさんてつ)を継いでから10年近く。将来も有望視ゆうぼうしされる才能にも恵まれた人物です。

ですが、春海には別に心奪われるものがありました。一瞬にして周囲の景色、音、重大な物事も消し去ってしまい、彼をどっぷりと沈み込ませてしまう世界。算術です。彼はあることをきっかけに、更にその壮大な世界へといざなわれていきます。

生まれながらに既にある一生安泰あんたいの『恵まれた立場』と胸が熱くなるほど夢中になれる『算術の世界』。

2つの世界の狭間はざまで揺れ動く春海の元へ日本独自のこよみを作り上げる大プロジェクトの話が舞い込みます。

碁、算術、暦、それぞれがどうからみあって前進していくのか見ものです。

魅力的な登場人物たち

この作品の主人公 渋川春海は身近に感じられるとても親しみやすい人物です。

でも春海だけじゃない、彼の人生にかかわる人たちのなんと魅力的なことでしょう!

しかも、この作品は史実しじつをもとにしたフィクションなので出てくる人たちは実際に存在した人たち。

もう、それだけでワクワクしてきますよ。

実直で温か、思わずキュンとしてしまう安藤あんどう有益ゆうえき、何を考えているかわからないけれどカッコいい切れ者 老中ろうじゅう 酒井忠清さかい ただきよ、水戸黄門のイメージを大いにくつがえす知的で激しい水戸光圀みと みつくに、穏やかでありながら圧倒的存在感のある頼れる藩主 保科正之ほしなまさゆき、好奇心旺盛で少年のようなキラキラ可愛いおじいちゃん 旗本はたもと 建部昌明たけべ まさあき、穏やかでありながら熱い情熱を燃やし続ける笑顔の御殿医ごてんい 伊藤重孝いとうしげたか、ミステリアスな天才算学家 関孝和せきたかかずなどなど。他にも魅力的な人物がわんさと出てきます。

ぜひぜひ、お気に入りの人物を見つけてください!!

つい、彼らに関する書籍をポチリたくなりますよ!(笑)

もう少し踏み込んでみると思った以上に世界が広がって知的好奇心が満たされる!という話

歴史小説を読んでいると決まって「?」が浮かぶ所ってありません?

役職名だったり、時間だったり、季節だったり。

そんな時、私、結構読み飛ばしてました・・・。

でもね、今回読むにあたって数年前に手に入れた『日本史図録』を引っ張り出してきたんですよ。高校の授業で使う、いわゆる資料集ですね。

そこで江戸時代の職制しょくせいを調べてみたんですよ。老中ろうじゅうだとか大老たいろうだとか、御家人ごけにん旗本はたもととかね。

そうしたら、まぁ、びっくり。「わかったぞ~!」という知的好奇心が満たされるだけじゃなくて、それぞれの立場だったり、位の差みたいなものが見えてきて、物語の理解度が全く変わってくるんです!

なんでこの人があの人を目のかたきにしてるのかみたいな理由も見えてきて本当に面白い!

「これまで自分が見てた世界ってラップの筒をのぞいて見える、ほんの一部分だけだったのね・・・てへへ。」な感じになります。

物語の世界の幅も奥行きも大いに広がります!だから、ぜひとも面倒臭がらずに調べてみて頂きたいです!

いずれ職制しょくせいをテーマにした記事も書いてみたいと思います!!


資料集って、学生時代より知識が増えた今の方が断然楽しめる高校の国語便覧もあると面白い!

中高生にも挑戦してほしい、おすすめの1冊です!

この作品、歴史の資料集だとか国語便覧びんらんなんかがあれば中高生でも十分に楽しめる作品です。

歴史好きな子はもちろん、学校の勉強がつまらないと思っている子なら尚更なおさら読んでいただきたいです。

歴史小説を読んでいるとつくづく思いますが、学校の教科書って本当に味気あじけないですよね。

勉強が『進学を目的とした手段』になっているからなんでしょうけど・・・。

教科書の中で「どんなことをした誰」と1文だけ書かれて終わりの膨大な人たち。

教科書だけ見ていると、他愛たあいない出来事や何でもない人々のように思えるけれど、私たちと同じように人生の中でドラマがあったんですよね。

しかも時を超えて名を残した人たちの人生、その人たちの行動によって起こった事件や出来事、どれもこれも面白くないわけがないですよ。

だから、学校の授業で「つまらんなぁ・・・」と思いながら、ただひたすらうらめしくあゆみの遅い時計を眺めながら過ごすのはもったいない!

小説なら彼ら一人一人がどんなに魅力的な人だったのか、はたまた「自分とは合わんな」「理解できん!」な人なのか知ることができるんです。

不思議なことに一度本の中でちょっぴりでも『お知り合い』になれると、味気なかった教科書も興味深い資料の一つになること間違いなしです。

でもそれ以前に、「歴史も小説も何だか自分にはハードルが高いよ。」と感じる人がいらしたら、まずは歴史マンガがおすすめです。歴史マンガ、子どもを理由にして本当のところは自分が読みたくて買っちゃいました!!てへっ!

よく『中学受験には歴史の流れがわかるから歴史マンガが良い!』とおすすめされているのを見かけますが、私からすると、そんな目的だけで歴史マンガを読むのはつまらない!もったいない!

私は『読むと世界が広がって人生がもっと面白くなるから読むのだ!』です。

ワクワクは学びの原点です。

小学生から大人の方まで幅広い世代におすすめです。


この漫画のおかげで、名前は知っていたけれど、どんな人か全く知らなかった上杉謙信うえすぎけんしんにキュンキュン。胸がときめきました。(7巻目に登場します♪)

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