こんにちは、引っ越しの荷物では何よりも『本』の箱がダントツに多い、元書店員のまじょじょまです。
今回おすすめしたいのは冲方丁の『天地明察』です。
『天地明察/冲方丁~漢字だけのタイトルに気後れしないで!
この作品を手に入れたのは、ずいぶん前。
「ホリエモン」こと堀江貴文が著書の中で取り上げていて興味を持ったのがキッカケでした。
5年越しに本棚からやっと手に取った1冊です。
読み始めて最初の感想は、『なんでもっと早く読まなかったんだろう・・・。』でした。
実際のところ、家事や育児、仕事だけが、すぐに読まなかった原因ではなかったと思うのです。
かな文字のできた国に生まれたからなのか、漢字だけが並んだタイトルは、一気にハードルがあがるのです・・・。例え実際の内容が親しみやすかったとしても・・・。
なので、同じような理由でまだ本棚の中で熟成されている方がいらしたら、ためらわず手に取っていただきたい1冊です。
あらすじ
時は江戸時代。徳川四代将軍 家綱の時代です。
主人公は渋川春海。将軍の前で囲碁を打つこと(御城碁)を認められたプロ棋士(碁打ち衆 )の家元 四家のうちのひとつ、安井家の次男(本当は長男)です。14歳で父の名(安井算哲)を継いでから10年近く。将来も有望視される才能にも恵まれた人物です。
ですが、春海には別に心奪われるものがありました。一瞬にして周囲の景色、音、重大な物事も消し去ってしまい、彼をどっぷりと沈み込ませてしまう世界。算術です。彼はあることをきっかけに、更にその壮大な世界へといざなわれていきます。
生まれながらに既にある一生安泰の『恵まれた立場』と胸が熱くなるほど夢中になれる『算術の世界』。
2つの世界の狭間で揺れ動く春海の元へ日本独自の暦を作り上げる大プロジェクトの話が舞い込みます。
碁、算術、暦、それぞれがどう絡みあって前進していくのか見ものです。
魅力的な登場人物たち
この作品の主人公 渋川春海は身近に感じられるとても親しみやすい人物です。
でも春海だけじゃない、彼の人生にかかわる人たちのなんと魅力的なことでしょう!
しかも、この作品は史実をもとにしたフィクションなので出てくる人たちは実際に存在した人たち。
もう、それだけでワクワクしてきますよ。
実直で温か、思わずキュンとしてしまう安藤有益、何を考えているかわからないけれどカッコいい切れ者 老中 酒井忠清、水戸黄門のイメージを大いに覆す知的で激しい水戸光圀、穏やかでありながら圧倒的存在感のある頼れる藩主 保科正之、好奇心旺盛で少年のようなキラキラ可愛いおじいちゃん 旗本 建部昌明、穏やかでありながら熱い情熱を燃やし続ける笑顔の御殿医 伊藤重孝、ミステリアスな天才算学家 関孝和などなど。他にも魅力的な人物がわんさと出てきます。
ぜひぜひ、お気に入りの人物を見つけてください!!
つい、彼らに関する書籍をポチリたくなりますよ!(笑)
もう少し踏み込んでみると思った以上に世界が広がって知的好奇心が満たされる!という話
歴史小説を読んでいると決まって「?」が浮かぶ所ってありません?
役職名だったり、時間だったり、季節だったり。
そんな時、私、結構読み飛ばしてました・・・。
でもね、今回読むにあたって数年前に手に入れた『日本史図録』を引っ張り出してきたんですよ。高校の授業で使う、いわゆる資料集ですね。
そこで江戸時代の職制を調べてみたんですよ。老中だとか大老だとか、御家人、旗本とかね。
そうしたら、まぁ、びっくり。「わかったぞ~!」という知的好奇心が満たされるだけじゃなくて、それぞれの立場だったり、位の差みたいなものが見えてきて、物語の理解度が全く変わってくるんです!
なんでこの人があの人を目の敵にしてるのかみたいな理由も見えてきて本当に面白い!
「これまで自分が見てた世界ってラップの筒を覗いて見える、ほんの一部分だけだったのね・・・てへへ。」な感じになります。
物語の世界の幅も奥行きも大いに広がります!だから、ぜひとも面倒臭がらずに調べてみて頂きたいです!
いずれ職制をテーマにした記事も書いてみたいと思います!!
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資料集って、学生時代より知識が増えた今の方が断然楽しめる!高校の国語便覧もあると面白い!
中高生にも挑戦してほしい、おすすめの1冊です!
この作品、歴史の資料集だとか国語便覧なんかがあれば中高生でも十分に楽しめる作品です。
歴史好きな子はもちろん、学校の勉強がつまらないと思っている子なら尚更読んでいただきたいです。
歴史小説を読んでいるとつくづく思いますが、学校の教科書って本当に味気ないですよね。
勉強が『進学を目的とした手段』になっているからなんでしょうけど・・・。
教科書の中で「どんなことをした誰」と1文だけ書かれて終わりの膨大な人たち。
教科書だけ見ていると、他愛ない出来事や何でもない人々のように思えるけれど、私たちと同じように人生の中でドラマがあったんですよね。
しかも時を超えて名を残した人たちの人生、その人たちの行動によって起こった事件や出来事、どれもこれも面白くないわけがないですよ。
だから、学校の授業で「つまらんなぁ・・・」と思いながら、ただひたすら恨めしくあゆみの遅い時計を眺めながら過ごすのはもったいない!
小説なら彼ら一人一人がどんなに魅力的な人だったのか、はたまた「自分とは合わんな」「理解できん!」な人なのか知ることができるんです。
不思議なことに一度本の中でちょっぴりでも『お知り合い』になれると、味気なかった教科書も興味深い資料の一つになること間違いなしです。
でもそれ以前に、「歴史も小説も何だか自分にはハードルが高いよ。」と感じる人がいらしたら、まずは歴史マンガがおすすめです。歴史マンガ、子どもを理由にして本当のところは自分が読みたくて買っちゃいました!!てへっ!
よく『中学受験には歴史の流れがわかるから歴史マンガが良い!』とおすすめされているのを見かけますが、私からすると、そんな目的だけで歴史マンガを読むのはつまらない!もったいない!
私は『読むと世界が広がって人生がもっと面白くなるから読むのだ!』です。
ワクワクは学びの原点です。
小学生から大人の方まで幅広い世代におすすめです。
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この漫画のおかげで、名前は知っていたけれど、どんな人か全く知らなかった上杉謙信にキュンキュン。胸がときめきました。(7巻目に登場します♪)